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Polyimide NEWS

学会発表:「第66回電池討論会」にて『ポリイミドバインダを用いたSiC系負極の設計』について報告しました。

2026年3月27日

2025年11月18日(火)~20日(木)に開催されました「第66回電池討論会」にて、現在開発を進めているポリイミドバインダについて報告を致しました。
会期最終日の講演でしたが、多数のご臨席とご質問を賜りありがとうございました。
講演当日に使用致しました資料を下記に掲載致します。

ポリイミドについて

ポリイミドの合成反応

ポリイミドの特徴

・スーパーエンジニアリングプラスチックの中でも最上位に位置し、優れた強度/耐熱特性/絶縁性を有する。

シリコン系負極バインダへのポリイミドの適用可能性

高容量・高入出力化のトレンド

理論容量の大きなSi系活物質の使いこなしが盛んに検討されている。
課題:大きな膨張収縮に伴う微粉化・サイクル劣化

バインダに必要とされる特徴

バインダが破断するまでの耐久性指標である「破断エネルギー」が高いことが重要と想定。
破断エネルギー MJ/m³=S-Sカーブの面積

水系ポリイミドバインダの開発

水系ポリイミドバインダのコンセプト

ポリイミドバインダ 環境負荷 熱処理温度(℃)
溶剤系(従来品) 250~350
水系(開発品) 150~350

水溶性ポリアミック酸溶液

環境負荷が小さな「水」を溶媒に用い、且つポリマー構造を調整することで低温での熱処理性を向上させる。

水系ポリイミドバインダの電池特性

バインダ種 SiO 約1400 mAh/g (wt%) バインダ (wt%) アセチレンブラック (wt%) SWCNT (wt%) 目付 (mAh/cm²)
水系ポリイミド 78.0 7.0 14.0 1.0 2
PAANa 78.0 7.0 13.8 1.2 2

SiOを用いた場合、水系ポリイミドはPAANaより高い容量保持率を示した。

理論容量がより大きいSiC(約1800 mAh/g)を用いた電極への水系ポリイミドの適用可能性を検証した。

ハーフセル評価方法

使用材料

材料名 種別
SiC (約1800 mAh/g) 負極活物質
SWCNT 導電助剤
アセチレンブラック 導電助剤
水系ポリイミドバインダ or PAANa バインダ

試験条件

2032型ハーフセル
対極:Li金属
電解液:1M LiPF6 FEC:DEC=3:7 V/V%

充放電
1st : 0.005 ~ 2V 0.1CA CCCV充電(0.01Cまで) CC放電
2nd~:0.005 ~ 1V 0.5CA CCCV充電(0.01Cまで) CC放電

初期効率は1サイクル目の放電容量と充電容量の比率を算出した。
サイクル特性は2サイクル目の放電容量を100%とした。

負極の作製

  1. スラリー作製
  2. 塗工
    ・目付:3 mAh/cm²
    ・集電箔:Niメッキ鋼箔(10µm)
  3. 仮乾燥
    ・加熱条件:100 ℃×3min.
  4. プレス
    ・ギャップ10 μm
    ・速度3 cm/s
    ・電極厚み約30 µm
    ・電極密度約1 g/cm³
  5. キュア
    ・Ar雰囲気(0.5 L/min)
    ・昇温速度:10 ℃/min.
    ・加熱条件:120-200 ℃ 1h

負極組成とサイクル特性の関係

・50サイクル目放電容量保持率はSiC割合と負の相関、SWCNT割合と正の相関を示した。

負極組成

SiC (wt%) 水系ポリイミド(wt%) アセチレンブラック (wt%) SWCNT (wt%) キュア条件
組成① 80.0 10.0 9.80 0.20 120℃1h
組成② 75.0 12.5 12.25 0.25
組成③ 85.0 7.5 7.35 0.15
組成④ 80.0 13.0 6.86 0.14
組成⑤ 80.0 7.0 12.74 0.26
組成⑥ 80.0 10.0 9.90 0.10

評価結果

SWCNTの使用量を増やした際のスラリー増粘を抑制するため、低粘度なSWCNT分散液の開発を行った。

ポリアミック酸を用いたSWCNT分散液の開発

・従来のSWCNT分散液は高粘度のため、SWCNT高濃度添加には適さなかった。そこでポリアミック酸を分散剤として用いた低粘度SWCNT分散液を開発した。
・開発したSWCNT分散液は優れたハンドリング性を示した。

分散液の性状

分散剤種 SWCNT濃度(wt%) 分散剤濃度(wt%)
ポリアミック酸 1.0 2.0
従来品(CMC等) ≦0.4 ≦0.6

負極組成

SiC (wt%) バインダ(wt%) アセチレンブラック (wt%) SWCNT (wt%) キュア条件
75.0 10.0 14.5 0.5 120℃1h

E型粘度計(30℃)による粘度測定

スラリーハンドリング比較(固形分35%)

ハーフセルサイクル特性比較

初期効率(%) 30サイクル目
放電容量保持率(%)
92.9 86.6
90.4 88.8
測定不可 測定不可
90.9 88.6

SWCNT使用量のサイクル特性への影響

・SiC/ポリイミド/SWCNTの三元系負極にて、SWCNT使用量のサイクル特性への影響を評価した。
・SWCNTを0.6wt%以上使用した場合、高いサイクル保持率を示した。

負極組成

SiC (wt%) 水系ポリイミド(wt%) アセチレンブラック (wt%) SWCNT (wt%) キュア条件
組成⑦ 80.0 19.7 0 0.3 120℃1h
組成⑧ 80.0 19.4 0 0.6
組成⑨ 80.0 19.1 0 0.9

評価結果

試験条件 初期効率 (%)
組成⑦ 85.8
組成⑧ 86.3
組成⑨ 85.8

初期効率を更に高めるため、ポリイミド/アセチレンブラック比の最適化検証を実施した。

ポリイミド/アセチレンブラック比の最適化

・ポリイミド/アセチレンブラック比、およびイミド化温度を最適化することで初期効率とサイクル特性の両立(初期効率:90%以上、50サイクル時放電容量保持率:93%以上)を達成した。

負極組成

SiC (wt%) 水系ポリイミド(wt%) アセチレンブラック (wt%) SWCNT (wt%) キュア条件
組成⑧ 80.0 19.4 0 0.6 120℃1h
組成⑩ 80.0 14.9 4.5 0.6
組成⑪ 80.0 12.9 6.5 0.6
組成⑫ 80.0 12.9 6.5 0.6 200℃1h

評価結果

試験条件 初期効率 (%)
組成⑧ 86.3
組成⑩ 88.4
組成⑪ 89.6
組成⑫ 90.3

PAANaとの比較

・最適化された組成⑫を用いた比較を実施。水系ポリイミドはPAANaより高い放電容量保持率を示した。

負極組成

バインダ種 SiC (wt%) バインダ(wt%) アセチレンブラック (wt%) SWCNT (wt%) キュア条件
水系ポリイミド 80.0 12.9 6.5 0.6 200℃1h
PAANa 80.0 12.9 6.5 0.6

評価結果

試験条件 初回放電容量 (mAh/g) 初期効率(%)
水系ポリイミド 1750 90.3
PAANa 1550 93.2

負極表面のSEM測定(1000倍)

フルセル評価

・最適化された組成⑫、および昨年度報告したSiO負極(組成⑬)を用いたフルセル(コインセル)評価を実施した。
・組成⑫は組成⑬より高容量、かつ高い放電容量保持率を示した。

負極組成

SiC
1800 mAh/g
(wt%)
SiO
1400 mAh/g
(wt%)
水系ポリイミド(wt%) アセチレンブラック
(wt%)
SWCNT
(wt%)
MWCNT
(wt%)
キュア条件
組成⑫ 80.0 12.9 6.5 0.6 200℃1h
組成⑬ 78.0 7.0 14.7 0.1 0.2 150℃12h

評価結果

まとめ

  1. 水溶性ポリアミック酸溶液を使用した電極スラリーは良好なハンドリング性を示した。
  2. SWCNTを0.6wt%以上使用した負極設計において、高いサイクル保持率が確認された。
    SWCNTの高濃度添加にあたり、ポリアミック酸を分散剤とした低粘度SWCNT分散液を開発した。
  3. 水系ポリイミドバインダはPAANaバインダと比較しサイクル保持率が高い結果となった。
  4. 昨年度報告したSiO負極と比較し、本SiC負極は高容量、かつ高い放電容量保持率を示した。