UBE/UBE株式会社

REPORT vol.5
窒化珪素/
EVベアリング素材への挑戦

EVの未来を変える!窒化珪素の力。
UBE㈱
窒化珪素営業担当

※肩書・担当は掲載当時のものです

01

製品が市場に出るまでの
私たちのチャレンジ

EVの急所「電食」から車を守れ!
次世代モビリティを救う窒化珪素とは

電気自動車(EV)の急速な普及は、自動車産業に大きな変革をもたらしましたが、同時に新たな技術的障壁も生じました。
それが、モーターの高電圧化に伴う「電食」問題です。
EVにはモーターの回転をなめらかにするための「ベアリングボール」が使われています。しかし、大衆車にも高電圧のモーター(800V)が積まれるようになり、従来の鉄製ベアリングボールでは、モーター駆動時に生じる電位差によって電流が流れ、放電損傷(=電食)が発生するという課題が浮上しました。ベアリングボールの電食が進行すると、最悪の場合には突然の駆動停止を引き起こす可能性もあり、EVの安全性を左右する重大な問題として認識されるようになったのです。
この見えない脅威に対し、モーター自体の基本構造を大きく変えることなく解決策を提示したのが、UBEのセラミックス「窒化珪素(SiN)粉末」です。
優れた絶縁性を持つこの素材の採用により、電流を完全に遮断し、電食によるトラブルを防ぐことに成功しました。
さらに、窒化珪素ベアリングボールは鉄に比べて非常に軽く、高速回転時の発熱や摩耗を抑えることで、モーター効率の向上や低燃費化にも貢献しています。UBEの窒化珪素は特に高強度、耐摩耗性、耐腐食性を実現できる高信頼材料として、他社の追随を許しません。

失敗が許されない世界で、 選ばれ続ける理由

高い技術力と長年にわたって積み重ねられてきた品質の信頼性が評価され、UBEはEVだけでなく、他のハイエンド領域においても窒化珪素のトップメーカーとしての立ち位置を確立しています。
ハイエンド領域とは、材料のわずかな差が、人の命を預かる乗り物の安全性や製品寿命、品質の安定性を左右する〝失敗が許されない〟世界を指します。
たとえば、航空機エンジン領域では、わずかな材料欠損が重大事故につながりかねません。半導体検査装置領域では、数ミクロン単位の変形や摩耗が検査精度を左右し、不良品流出の原因にもなり得ます。さらに高速回転する産業機械領域では、部品の破損による交換頻度が増し、設備稼働率や生産性に大きな影響を及ぼします。
つまり、ハイエンド領域では、素材レベルで信頼性を担保できる企業であることが大前提なのです。ここが汎用品メーカーとの大きな違いです。1986年の上市以来、UBEの窒化珪素製品は用途に合わせてさまざまに形を変え、スペースシャトル、航空機エンジン、さらには電子産業に至るまで、幅広い分野で使用されています。
こうした信頼性を支えているのが、UBE独自の製法「イミド熱分解法」です。品質を最優先に考え、この製法を選択したことが、今、ハイエンド領域における大きな競争力となっています。
02

テクニカル・ハードルへの
私たちのチャレンジ

不純物は他社の1/300!? 破損の起点を削ぎ落とす「イミド熱分解法」

※窒化珪素粉末を使った成形物

窒化珪素粉末のポテンシャルを最大限に引き出すためには、素材そのものの「純度」が命となります。
セラミックス焼結体(高温で焼き固めたセラミックス素材)において、ほんのわずかな不純物ですらそこから亀裂が生じる「破損の起点」となり、製品の致命的な欠陥につながるからです。
UBEは、独自の製造プロセスである「イミド熱分解法」を確立し、微細な粒子構造を精密に制御することに成功。その結果、製品の品質や信頼性に直結する金属不純物をppmオーダー(不純物の割合が100万分の1単位のレベル)という極限の世界で管理できています。
他社の高純度グレードと比較しても、Fe(鉄)は約1/100、Al(アルミニウム)に至っては1/300という圧倒的な不純物の少なさを誇ります。この極めて高い純度が、過酷な環境下でも安定した品質を約束するのです。

量産まで9年。 50年前から続く
〝品質へのこだわり〟が
代替できない素材に

窒化珪素粉末は、一見するとどのメーカーの製品も同じように見えますが、実際には、その作り方が性能を大きく左右します。
一般的な製法では、シリコン粉末を鉄球で粉砕する工程があり、その過程で金属不純物が混入します。また、粉末粒子の大きさそのものにもバラツキが出てきます。
一方、UBEは先にあげたとおり、化学反応をベースとした「イミド熱分解法」を採用しています。開発当初から粉砕に頼らず、粒子を形成することで、高純度かつ粒径のそろった粉末を確実に実現できるのです。
ただし、この製法は設備投資も大きく、量産も容易ではありません。1970年代後半から製品開発が始まり、パイロットプラントの完成まで4年、商業運転開始までさらに9年という年月を費やしています。
当時は、現在のようなEV市場も存在していませんでした。当然、ベアリングボールの電食を解決することを目的に研究開発を始めたわけでもありません。それでも、将来を見据え、品質を優先して「より均一で、不純物の少ない窒化珪素が必要とされる時代がくる」と信じ、貫いてきたからこそ、50年後の今、「他社では代替できない材料」として評価されているのです。
03

窒化珪素が
拓く未来への
私たちのチャレンジ

脱炭素の切り札を量産せよ。 生産能力1.5倍で挑む、サステナブルな社会の実現

脱炭素の切り札を量産せよ。 生産能力1.5倍で挑む、 サステナブルな社会の実現

窒化珪素ベアリングボールがもたらす価値は、EVの安全性向上やモーターの長寿命化にとどまりません。
世界のCO2排出量の約7~8%を占めるガソリン車からの脱却、すなわちEV普及を支えることは、カーボンニュートラルの実現に向けた大きな社会貢献だと考えています。
EV市場は現在の4000万台から2030年には8000万台規模へ成長すると予測されており、UBEは新工場の建設を決定。生産能力を従来比で1.5倍へと大幅増強し、2026年度からの稼働を予定しています。
さらに、UBEの窒化珪素粉末の活躍の場は自動車産業だけにとどまりません。近年は、わずかな品質差も許されない半導体分野での需要が拡大。特に、半導体検査に用いられる材料として採用が進んでいます。こうした用途では品質のバラツキや歩留まり(生産された製品に占める良品の割合)が検査精度に直結するため、イミド熱分解法を採用するUBE製品から他社品への切り替えが難しく、品質管理の厳しいUBE製品のみを採用する顧客も存在するほどです。
また、UBEの窒化珪素粉末からつくられた成形体は極めて頑丈で、欠損や摩耗が起こりにくいことが特徴です。切削工具部品の材料としても重用され、生産現場の安定稼働を支えています。

見えない場所から、 未来を動かす

UBEがつくっているのは粉末です。完成品ではありません。しかし、その粉末がなければ実現できない技術があります。
EVの普及や半導体の進化など、世の中の大きな変化の裏側でUBEの材料が役立っている。そこに仕事のやりがいを感じると同時に、他社とは一線を画す品質を持つ製品だからこそ、その価値や可能性を顧客に伝え、市場へ広げていく責任があると考えています。
現在はEV向け用途が中心ですが、将来は、空飛ぶ車をはじめとする次世代モビリティやロボットといった、これまでにない先端技術への展開も期待されています。そのとき求められるのは、これまで以上に高い品質と信頼性です。しっかりとその品質要求に応え続け、理想の未来を叶えていきたいと考えています。
見えない場所で性能を支え、社会の進化、豊かさを後押しする。UBEの挑戦は、これからも続いていきます。

次回は「創薬/
CDMO(医薬品開発製造受託)」
のパーパス体現に迫ります

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