製品コラム UBE Solution Academy
ポリイミド
高耐熱性、耐薬品性などを兼ね備えたポリイミド樹脂は、電子機器などに広く採用されている
ポリイミドについて、特性や特徴、用途などの切り口からご説明。
Overview 素材概要
スマートフォンにも
ポリイミドが入っています
ポリイミドもポリアミド(ナイロン)と同じくエンジニアリングプラスチックであり、ほかの樹脂に比べて耐熱性、機械的強度、耐薬品性などに優れている点でも同じです。
しかし、ポリアミドとポリイミドにはいくつかの重要な違いがあります。ポリアミドの融点が200℃前後なのに対して、ポリイミドは450℃以上とさらに耐熱性に優れ、-196℃~300℃の温度範囲で膨張などの物性(寸法)変化もほとんどありません。
この類まれな特性を生かし、フィルム状に薄く伸ばしたポリイミドフィルム、粉状にしたポリイミドパウダーなどが自動車、家電製品まで幅広く使用されています。たとえば、私たちにとって身近なスマートフォンやパソコン、テレビの液晶パネルに欠かせない電子回路基板になくてはならない素材としてもポリイミドが使われています
Features ポリイミドの特徴
航空宇宙から
マイクロエレクトロニクスまで
薄くて熱に強いポリイミドは、耐熱性のほかにも機械特性、難燃性、電気絶縁性、低誘電性、耐薬品性、耐放射線性に優れているなどさまざまな特徴があります。
極低温から高温まで物質変化もほとんどありません。熱膨張率が小さいため、寸法安定性(安定した形態を保つこと)があります。また化学薬品にも強く、有機溶剤にも溶けることはありません。また、フィルム状、塗料(ワニス)、パウダー状などあらゆる形状に加工しやすいため、半導体を原料とした電子部品(マイクロエレクトロニクス)、ディスプレイ、通信機器など、多種多様な用途に展開することが可能です。
製品の性能を上げ、信頼性を高める名バイプレイヤー
UBEのつくるポリイミド製品にもトップレベルの耐熱性と電気特性として絶縁性などを誇るポリイミドフィルム「ユーピレックス」(UPILEX®)、機械的性質、耐薬品性に優れているポリイミド前駆体のポリアミック酸溶液「ユピア」(UPIA®)や超高耐熱でポリイミド成形体原料にもなるポリイミドパウダー(UIP®)などがあり、各分野で活躍しています。
UBEのフィルムは自社生産によるBPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物) を原料とした超耐熱性です。 特に、低吸水性、寸法安定性、耐薬品性に優れます。また、フィルム表層機能化の技術を持っており、基本特性を保持しつつ目的に応じた機能・特性をフィルム表面に付けることで、様々なニーズにお応えしています。
UBE独自のポリイミド原料モノマー「BPDA:ビフェニルテトラカルボン酸二無水物」からつくられた超耐熱性ポリイミドフィルムはラインナップも多彩です。基本グレードであるUPILEX®-Sは、機械特性に優れたポリイミドフィルムで、電子機器の必須部品・半導体に接合されるテープ状の回路基板、OA機器など、高い信頼性を求められるさまざまな用途に広く使用されています。また、成形グレードUPILEX®-RNは、成形加工性に優れたポリイミドフィルムで、絶縁材用途のほか、エンボス加工やスピーカーの振動版などに使用されています。
ポリイミド塗料(溶液)であるUPIA®は金属などの基盤に塗布して高温焼成することにより、耐熱・耐薬品性、電気絶縁性に優れたポリイミド被膜を形成することができます。主な用途にレーザープリンタ用ベルト、ノートパソコンや液晶モニター用の基板、エナメル線用絶縁被膜、リチウムイオン二次電池(LiBバッテリー)に使われる材料部分の結着材などがあります。
パウダー状のUIP®は樹脂フィラー(基板樹脂に添加して物性を向上させる増量材)としてトップレベルの耐熱性があり、熱変形温度が高く、優れた耐薬品性で各種溶剤にも溶けない特徴を持っています。樹脂の特性や性能の改善・変化を目的とした化学物質や、ダイヤモンドなどの砥粒でつくられる砥石の強度を高める添加物として使用されています。
<ポリイミド製品とそれぞれの特徴>
UPILEX®
・高耐熱性(ガラス転移温度、熱分解温度が高い)
・高引張り強度、高弾性率
・電気絶縁性が高く、誘電率が低い
・耐溶剤性に優れている
- UPILEX®- S
高温でも高い機械特性を保持
- UPILEX®- RN
高温域で低弾性・高伸度
UPIA®
・機械的性質に優れている(高引張り強度、高弾性率)
・電気絶縁性に優れている
・耐熱性に優れている(分解温度、ガラス転移温度が高い)
・耐薬品性に優れている(酸、アルカリ、エッチング液)
UIP®
- UIP®-R
高耐熱,高耐衝撃性,易成形性
- UIP®-S
超耐熱,低クリープ,低吸水,高弾性,高摩耗抵抗
- UIP®-SA
超耐熱,低クリープ,低吸水,易成形性,易微細加工性
各グレード共通の特長:
耐薬品性,耐放射線性,耐プラズマ性,難燃性
Applications ポリイミドの用途
高温にも低温にも強く、
摩耗せず電気も通さず
高温や機械的ストレスの耐性に優れたポリイミドフィルムは、高信頼性を求められる機器に使用される製品です。最高レベルの分子間力を持つため、耐熱性、半導体の絶縁材料として、航空宇宙や防衛分野において重要な機器を覆う絶縁保護フィルムとして頻繁に使われています。 またCFRP(炭素繊維で補強・強化されたプラスチック)の離型紙(粘着性のある材料の表面を保護するためのフィルム)にも使用されます。くわえて成形加工が容易なため、ワニスやパウダーに形状を変え、暮らしの様々な場面で縁の下の力持ちとして働いています。
一方で今やなくてはならない機器であるスマートフォン、携帯電話、液晶テレビなどのディスプレイを持つ製品で強みを発揮します。また、熱を出さずに光だけを出す、薄さが特徴の有機ELディスプレイの材料としても注目を集めています。
最新テクノロジーに、
ポリイミド
UBEは、リチウムイオン電池(LiBバッテリー)材料であるポリイミドバインダの開発にも携わっています。リチウムイオン電池とは正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う電池のことで、充電して繰り返し使える電池として、携帯電話やPCのバッテリー、ドローン、電気自動車、電動バイクなど幅広い用途で使われています。
そのバインダとは「のり」の役割をするもので、リチウムイオン電池の正極・負極に内蔵される粉末状の材料をつなぎ止め、金属箔の上に固定するために用いられるものです。UBEのポリイミドバインダ(UPIA®-LiB)の一つである水溶媒バインダは、般的なバインダに比べて低い熱処理温度が可能です。さらに大学などの研究機関とも連携し、高性能ポリイミドバインダの性能実証を随時行っています。
また、ポリイミドパウダー(粉体)に関しては、付加型ポリイミド「PETI®-330」を開発。200℃でいったん溶融したのち370℃で硬化する特性を持つ素材として、航空機の部品、産業機械部品のほか、ダイヤモンドツール、摩擦材などを高性能化させるバインダとしての役割も果たしています。一方で環境問題への取り組みに力を入れるUBEでは、従来のポリイミドワニスに使用されるN-メチル-2-ピロリドンなどの高沸点有機溶媒にかわって、水を溶媒に用いる『環境配慮型ポリイミドワニス』『環境配慮型ポリイミドワニス(UPIA®-NF)』の開発で、有機溶媒の処理やエネルギーコストにも貢献しています。
日々の研究により、環境変化に応じたポリイミド製品を生み出すことで、未来への可能性がさらに広がっています。