ガバナンス リスクマネジメント

指針・基本的な考え方

UBEグループリスクマネジメント基本指針

UBEグループは、事業活動を遂行する上で発生し得るリスクを適切に管理する為に「リスク管理規程」を定め、UBEグループ全体を対象にしたリスクマネジメントを実施します。

スコープ

UBEグループ(UBE株式会社および連結子会社)を対象とします。

ゴール

UBEグループのリスクを適切に管理します。

コミットメント

UBEグループの外部および内部の課題に関するリスクを体系的、網羅的、自律的にマネジメントする為に、リスクマネジメントの体制と仕組みを整備し、継続的に改善します。

  • UBEグループ リスクマネジメントの全連結子会社、全部門への適用(2030年度)

責任部署・見直し

サステナビリティ推進部リスク管理Gが統括管理を行います。

本指針は、毎年度末のリスク管理委員会で管理状況を確認し、必要に応じ内容を見直します。期中に見直しが必要な場合は、リスク管理委員会で審議し、承認を得ます。

リスクマネジメント体制

当社では、取締役会決議にて制定した「内部統制システム構築の基本方針」に基づき、リスク管理規程を定め、当社グループ全社を対象にしたリスクマネジメント制度を確立しています。本制度では、当社グループのリスクマネジメントに関する業務を統括・推進するために取締役、執行役員の中から社長が指名するチーフ・リスク・オフィサー(以下CROという)を選任し、CROを補佐しリスクマネジメントの事務局となるサステナビリティ推進部リスク管理Gを設置しています。

当社グループ全体に影響を及ぼす経営リスクについては、リスク管理委員会にて審議した後、経営会議〔サステナビリティ委員会〕に付議し、リスクの認定と管理方針や対策の有効性等を審議します。また、取締役会は、その審議内容について、定期的に報告を受けることで監督しています。経営リスクに関しては、戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、リスクテーマごとに「リスクテーマ役員」を定め、当該役員が全社俯瞰的な観点から当該リスクやその対策の有効性を評価し、対策の実施部署に対して次年度のリスク対策等を指示・指導を行う体制を整備しています。

これらの全社的リスクマネジメントを通じ、当社グループにおけるリスクを低減し、リスクが顕在化したときには、その被害を最小化し、拡大を防止するとともに、経営層がリスクを把握の上、適切な指示や資源投下等の経営判断ができる体制を構築・維持することによって、当社グループの持続的成長と企業価値の向上に取り組んでいます。

2024年度は、リスク管理監査等を通じた管理強化、適切なリスクの選定、変化する社内外の経営環境に応じたリスクテーマの見直しなど従来の取り組みに加えて、経営者が、特に経営において管理すべき必要がある重要なリスク管理をトップダウンで行う「UBEリスク管理制度」と部門長がボトムアップで自律的に行う「部門リスク管理制度」の二階層管理体制を構築し、さらなる全社的リスクマネジメントの質向上を図りました。

目標と実績

ゴール

UBEグループのリスクを適切に管理します。

コミットメント

UBEグループの外部および内部の課題に関するリスクを体系的、網羅的、自律的にマネジメントする為に、リスクマネジメントの体制と仕組みを整備し、継続的に改善します。

UBEグループ リスクマネジメントの全連結子会社、全部門への適用(2030年度)

実績

当社のリスクマネジメント制度は2018年度導入以来、継続的に改善しており、2024年度は、リスク管理監査等を通じた管理強化、適切なリスクの選定、変化する社内外の経営環境に応じたリスクテーマの見直しなど従来の取り組みに加えて、経営者が、管理すべき必要がある重要なリスク管理をトップダウンで行う「UBEリスク管理制度」と部門長がボトムアップで自律的に行う「部門リスク管理制度」の二階層管理体制(下図)を構築し、さらなる全社的リスクマネジメントの質向上を図りました。

更に、UBE(株)本社部門に、ISO(国際標準化機構ISO9001品質マネジメントシステムなど)をベースとした「本社マネジメントシステム」を導入し、ステークホルダーの開示要求、お客様要求への対応、ISO認証を取得している事業部、事業所、グループ会社のマネジメントPDCAとの同期化により、グローバルなスペシャリティ化学企業としてのリスクマネジメントを推進できる仕組みを強化しました。

UBEグループリスクマネジメント体制図
UBEグループリスクマネジメント体制図

各部門は、「部門リスク管理制度」のPDCAにて網羅的にリスクを総ざらいし、対処するリスクのうち、UBEグループに影響するリスクを選定し、その影響度と発生頻度を基準にレベルを判定します。

経営リスクは、リスク管理委員会で選定したリスクテーマ(2024年度末で12件)に紐づき、UBEグループに水平展開したリスクであり、重要リスク、ミドルリスク、マイナーリスクは影響度と発生頻度により区分します。下表に、各リスク(2024年度末で766件)の登録状況を示します。

figure
リスクテーマの登録状況(2024年度末)
リスクの登録件数(2024年度末)
各部門の登録件数 UBE(株) グループ会社 合計
リスクテーマ 12 - 12
経営リスク 101 53 154
重要リスク 159 177 336
ミドルリスク 105 75 180
マイナーリスク 57 27 84
合計 434 332 766
  • 下表28社

これらのリスクはそのレベルに応じた職制承認ルートを経て、「UBEリスク管理制度」の「リスク管理システム」に登録され、リスクシナリオの想定、対策の立案、実施、対策後のレビュー評価、担当する職制、リスク管理委員会における審議、トップマネジメントによる指示というPDCAサイクルを回します。 トップダウンとボトムアップのリスク管理PDCAを、UBEグループ全体で連携して廻す「二階層管理体制」により、UBEグループのリスクを網羅的に適切に管理できる全社的リスクマネジメントを構築し、推進しています。

リスクマネジメントのUBEグループへの適用については下表のとおりで、2024年度末で、連結子会社への適用は、下表の28社であり全連結子会社の90%になります。

国内(11社) 海外(17社)
宇部エクシモ
宇部マクセル
UBE過酸化水素
宇部フィルム
UBEエラストマー
宇部物流サービス
UBEマシナリー
テイーユーエレクトロニクス
福島製作所
宇部総合サービス
UBEアセット&インシュランス
UBE Corporation Europe S.A.U
UBE Europe GmbH
Repol S.L.U(現 UBE Composites Europe, S.L.U.)
Manufacturas Paulowsky S.L.U.
UBE Chemicals (Asia) Public Co.,Ltd.
UBE Fine Chemical (Asis) Co.,Ltd
UBE (Thailand)Co., Ltd
Rayong Fertollizer Trading Co., Ltd
Thai Synthtic Rubbers Co.,Ltd
UBE Engineered Composites,Inc
UBE America Inc.
UBE CORPORATION AMERICA INC.
UBE Europe Belgium NV
宇部興産(上海)有限公司
宇部興産機械(上海)有限公司
UBE Machinery Inc.
UBE Machinery Thai Co.,Ltd

取り組み

当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる 主な事項は次の通りです。

  1. (1)各事業の経営成績に影響を与える変動要因
  2. (2)地球環境問題
  3. (3)製品品質・製造物責任
  4. (4)大規模事故(爆発・火災・漏洩事故)
  5. (5)研究開発
  6. (6)自然災害
  7. (7)情報セキュリティ
  8. (8)法令・規制
  9. (9)人的資本・人権
  10. (10)金融市場
  11. (11)海外事業展開(カントリーリスク)
  12. (12)知的財産権
  13. (13)買収・資本提携
  14. (14)訴訟
  15. (15)サプライチェーン

事業等のリスク

当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を下記のとおり記載します。

これらの事項は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性がありますが、当社グループは、リスク管理委員会を設置し、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクの回避・分散及び発生した場合の対応、リスクの移転、危機管理対策等に最大限努力する方針です。

下記事項には、将来に関するものが含まれますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

(1)各事業の経営成績に影響を与える変動要因

当社グループは、化学及び機械の事業分野で様々な製品を製造・販売しており、各事業分野において想定されるリスクは以下のとおりです。

①化学事業

構造改革事業については、同業他社の生産能力増強により当該製品の供給が大幅に増加した場合やベンゼン等の主原料価格が国際的な需給バランスや原油等のエネルギー価格の変動により急激に変動した場合には、製品と主原料の価格差(スプレッド)が著しく縮小することで業績に悪影響を与える可能性があります。また、原料の一部については特定の地域や供給元に依存しているため、供給元の事故等により必要な原料を確保できない場合があります。スペシャリティ事業については、情報技術やデジタル家電関連等の短期的な世代交代が起こり得る製品では、顧客要求にタイムリーに応じられないことによる販売量の減少や競争激化に伴う価格低下によって業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して、(一)原料市況動向の注視と価格高騰時の製品価格への迅速な転嫁による適正スプレッドの確保、(二)工場におけるコストダウンや不採算事業の能力縮小・撤退、(三)経営資源の重点投入によるスペシャリティ事業の成長加速等、収益基盤の強化に積極的に取り組んでいます。

②機械事業

機械事業の主力製品は、ダイカストマシン、射出成形機、運搬機、除塵機、化学機器、粉砕機等であり、内燃エンジン系自動車販売台数の減少や公共事業の減少、原燃料価格高騰による電力会社をはじめとした各社の回復の遅れに加え、脱炭素社会に向けた設備投資や補修予算が控えられた場合には、受注や出荷、サービス提供の減少といった影響を受ける可能性があります。また、グローバル化する市場においては、各国の景気の減速、貿易摩擦、競合メーカーの台頭等で販売が減少する可能性があります。

以上のようなリスクに対して(一)他社製品を含めたアフターサービス事業の拡充による収益拡大・安定化、(二)コストダウンの強化、(三)カーボンニュートラル・DX・リサイクル事業やEV化に伴うダイカストマシン・射出成形機の大型化等の成長市場における顧客ニーズへの対応力強化等、収益基盤強化に積極的に取り組んでいます。

(2)地球環境問題

気候変動問題については、当社グループはこれまで石炭を有効活用しつつ事業の拡大を図ってきましたが、炭素税や規制等が強化された場合、税負担等によりコストが増加する可能性があります。また、環境意識の高まりが脱炭素社会への移行を加速させることにより、ステークホルダーから気候変動問題への対応が遅れている企業と評価された場合、製品の販売が低迷するなど、企業価値に悪影響を与える可能性があります。さらに、地球環境の変化により自然災害が激甚化・高頻度化する場合、製造拠点の設備被害、物流網の遮断、原材料等の入手困難等により生産活動に悪影響を与える可能性があります。

また、サーキュラーエコノミーやネイチャーポジティブ等の地球環境に関する関心の高まりを背景に、顧客等から当社グループ製品に対する要求が変化する可能性があり、この問題への対応が遅れることにより製品の販売が低迷するなど、企業価値に悪影響を与えることが予測されます。

以上のようなリスクに対して当社グループは、これらの地球環境問題を経営の最重点課題と定め、中長期的な戦略及び対策方針を検討・審議する地球環境問題対策委員会を設置しています。また、省エネ推進・プロセス改善、再生可能エネルギー利用の最大化、事業構造改革及び革新的な技術開発によりGHG排出量の削減に注力しています。さらに、当社グループの強みを生かした環境貢献型製品・技術及び環境製品ブランドの販売拡大と開発を推し進めることにより、持続可能な社会の実現に貢献していきます。これらの実現に向けた製品・開発品として、再生材利用化学製品(複合樹脂リサイクル等)、バイオマス材利用化学製品、CO2を原料とする化学品製造(CO2電解)等があります。

(3)製品品質・製造物責任

当社グループの製品は、自動車部品やデジタル家電、医薬品、家庭用品等の身近なものから、社会インフラの整備まで多くの分野で使用されます。そのため、品質に瑕疵のある製品が出荷された場合、その波及範囲は広範囲にわたり、安全上や健康上他の問題に至らない場合であっても、当該製品の回収や顧客への損害賠償等、多額の費用が発生し、さらに、社会的な信用失墜により事業活動が低迷する可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、工程管理を確実に行うための設備の維持や適切な測定機器の設置、作業マニュアルの整備、従業員の教育等に努め、万一の不良品発生及び流出を防止できる体制を構築するとともに、国内外を対象とした生産物賠償責任保険に加入しています。さらに、当社グループでは、過去に判明した品質検査に関わる不適切事案の対策として、グループ品質保証委員会を設置し、毎年の品質大会開催等、ガバナンスの強化、全従業員に対する継続的な教育の実施等、再発防止と風化防止に努めています。

(4)大規模事故(爆発・火災・漏洩事故)

当社グループの製造事業所、特に化学製品の製造工場では、多種、大量の高圧ガスや危険物等の原材料、電気、スチーム等のエネルギーを使用しており、設備故障、人為的ミス、自然災害により大規模な爆発・火災・漏洩が発生する可能性があります。その場合には、従業員・地域住民等の生命・身体・財産並びに環境へ重大な影響を与えることとなり、事故対応や復旧の費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客・地域住民に対する補償が生じることで、業績に深刻な影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、「安全はすべてに優先する」を環境安全共通の価値観として、グループ環境安全運営委員会の設置、基本行動の徹底、関連法令の遵守の徹底、設備の定期点検及び適切な維持補修、教育・経験を積んだ従業員の確保、管理マニュアルの整備、HAZOP(Hazard and Operability Study)等リスクアセスメントの実施、DXを活用したスマートファクトリー化、防災訓練の定期実施、環境安全監査、毎年の安全衛生大会開催等により、爆発・火災・漏洩等の事故の予防に取り組んでいます。

(5)研究開発

当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をタイムリーに上市するために、あるいは次世代の事業の創出のために探索研究を含む研究開発に取り組んでいます。研究開発は長期間にわたることもあり、研究開発テーマが計画どおり進まず、新製品の開発が著しく遅延することや開発を断念した場合、あるいは医薬事業においては新薬の承認見送りや承認取り消しがなされた場合には、事業における競争力が低下し業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、将来の市場ニーズを見据え、事業ポートフォリオの強化・拡充を図るため、新たに研究所を設置するなど、重点的に経営資源を投入しています。これにより研究開発成果の早期実現と精度の向上を図ることにより、スペシャリティ事業の更なる成長に取り組んでいます。

(6)自然災害

当社グループは、国内外に製造拠点や営業拠点を有しており、これらの施設が、想定を超えた大規模な地震、台風、集中豪雨、津波等の自然災害により甚大な被害を受け、製造拠点における生産停止や営業拠点の活動休止等が発生する可能性があります。その場合には、建物・製造設備の復旧、棚卸資産の廃棄、設備の再稼働や原料調達・製品出荷の遅延等により、多額の費用及び機会損失が発生し業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、危機対応委員会及び自然災害対策委員会を設置し、災害発生時の対応マニュアル等の整備、建物・製造設備の計画的な改修・強化、定期的な防災訓練、教育、リスクマネジメント制度を活用した個別リスクの抽出と対策等を実施しています。また、早期に事業復旧を図る仕組みとして、自然災害発生時における事業継続計画(BCP)を策定し、定期的な見直しと訓練を行っています。

(7)情報セキュリティ(サイバーセキュリティ)

当社グループは、各種業務システムやプラント制御システムを利用しており、年々高度化しているサイバー攻撃や不測の事態によるシステム停止、重要情報の漏洩や破壊等の被害が発生した場合、生産活動の停止、損害賠償や信用の失墜により、業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、サイバーセキュリティを重要な経営リスクの一つとして捉え、情報セキュリティ委員会の設置、関連規程の整備と周知、不正侵入探知・防御等の技術的な対策、IT-BCPの整備・訓練、当社グループの全役員・従業員に対するセキュリティ教育と訓練等を実施するとともに、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を設置するなどのセキュリティインシデント発生時の被害を最小化するための体制を構築しています。また、これら対策状況を定期的に評価、改善を行いリスクの低減に努めています。加えて、サプライチェーン全体のセキュリティを向上させる取組みとして取引先やパートナー企業等のセキュリティ対策状況を把握、内部不正行為の早期発見と防止策として従業員の情報取扱いの監視、有事発生時の体制強化として外部SOC(Security Operation Center)による24時間365日のインシデント監視及び専門家の支援体制を整備するなどセキュリティ対策の強化に努めています。

(8)法令・規制

当社グループは、国内外に製造拠点や営業拠点を有し、様々な国々・地域に製品を供給していることから、各国・地域における製造・営業活動に関わる法令・規制を遵守する必要があり、これらが改定された場合には、製造設備等の改修や変更、労働環境の整備等で費用が発生する可能性があります。また、法令・規制に違反した場合には、多額の罰金・制裁金・賠償金、従業員の収監等を受けるだけでなく、事業活動の制約や社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、コンプライアンスの確保・推進及び市場における公正で自由な競争を損なう行為を防止し、企業活動の健全性確保のためコンプライアンス・オフィサーを置き、その諮問機関として顧問弁護士を加えたコンプライアンス推進委員会を設置しています。また、コンプライアンスに関わる問題を迅速に察知・是正するため、職制ルートによらず役員・従業員が直接連絡できる通報窓口(UBE C-Line)を設けています。

事業活動に関わる国内外の主な法規制をリスト化し、当該法令等の主幹部署と関連する部署において法規制の改廃の情報を漏れなく共有する体制を整備するとともに、リスクマネジメント制度において法規制に関わるリスクを洗い出し、各々のリスクに対する対策を実施しています。また、当社グループの全役員・従業員を対象にしたe-ラーニング・研修の定期実施等によって法規制の遵守とそれを堅持する企業風土を醸成しています。

加えて、近年、安全保障の観点に立った貿易管理の必要性が高まる中、これに対応すべく、安全保障輸出管理委員会を設置し関連する法令への違反リスクを回避する体制を構築しています。

(9)人的資本・人権

当社グループは、競争の激しい市場において、製品やサービスの提供を継続し企業価値を向上させるため、新規性のある製品や市場の創出、付加価値の高いビジネスモデルの構築等が不可欠であり、多様な技術・知識・視点を融合させてイノベーションを生み出せる高い専門性を持つ人財を獲得する必要があります。また、従業員にはOJTや教育訓練の面から、経験豊富な人財並びに業務やプラント運転操作等のノウハウを持った人財の確保も重要になります。こうした優秀な人財の獲得が困難となる場合や、重要な人財の社外流出が生じた場合には、企業活動に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、経営方針に「個性と多様性の尊重と働きやすい職場環境の整備」を掲げ、「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を推進しています。女性活躍推進をはじめ、外国人やシニア人財の活躍支援、障がい者雇用とその能力開発に取り組み、働きがいのある職場を提供するとともに、賃金を含む待遇改善や、多様な人財一人ひとりが活躍できる柔軟な働き方の整備、労働時間の短縮を推進しています。

一方、当社グループやサプライチェーンにおいては、国際的な「ビジネスと人権」に関する意識の高まりを背景に人権に関する高度な対応が求められており、適切な対応が講じられていない場合、企業価値に悪影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対して当社グループは、UBEグループ人権指針のもとに取引先とともにサプライチェーン全体の人権尊重に取り組んでおり、人権デューデリジェンスの体制整備を推進しています。また、社内の人権教育体制を整え、人権教育を実施し、当社グループの全役員・従業員が人権について正しい理解と認識を持ち行動できるよう取り組んでいます。また、グループ健康管理推進委員会を設置し、疾病管理から健康増進施策へ、健康投資を実施し、当社の中長期的企業価値の向上に取り組んでいます。さらに、人財・人権委員会を設置し、当社グループ全体での経営戦略と連動した人財戦略の推進及び人権の尊重に向けて、関連するリスクを特定し、方針及び目標を設定する体制を整えています。

(10)金融市場

当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行等による資金調達を行っています。主要金融市場において著しい混乱が発生する場合、あるいは当社に対する信用格付が大幅に引き下げられるなどの信用力が著しく低下した場合には、好ましい条件で資金調達ができず、成長投資等のために必要な資金を十分に確保できない可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、キャッシュ・フローを重視した経営を行い健全な財務体質を確保・維持するとともに、現預金、コミットメントライン等において十分な流動性を確保しながら、返済(償還)期限の分散、調達手段の多様化を図ることで、資金調達環境変動の影響を低減するよう取り組んでいます。また、当社グループは、外貨建てによる原材料等の輸入や製品等の輸出に伴い、外国為替相場の変動による影響を受ける可能性がありますが、債権債務を概ね均衡させるとともに、適宜為替予約等を実施することで、その影響の低減に取り組んでいます。

(11)海外事業展開(カントリーリスク)

当社グループは、化学製品並びに機械製品については、海外に生産、開発、サービス拠点を有しており、アジア、北中南米、欧州等にて主に事業活動を展開しています。2024年度の海外売上高は、連結売上高の約54%を占めています。これらの事業活動には、海外の政治・経済情勢の悪化、戦争・紛争・テロ等に伴う社会的混乱、進出先の外資に対する規制強化、経済・通商政策の変更、環境関連の規制強化、労働争議の発生等のリスクが内在しており、これらが顕在化した場合は業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、海外事業展開における緊急事態に速やかに対処するため、情報の集約や緊急時の対応等のマニュアルを整備し、専門コンサルタントを有効活用するとともに、危機対応委員会が主体となり、必要な情報の収集及び現地の各拠点との適時・適切な情報共有を行える体制を整えています。さらに、有事の際には対策本部を設置し、従業員の安全を最優先事項として迅速・的確な対応を図っていきます。

(12)知的財産権

当社グループは、知的財産権が重要な資産であることを認識し、事業競争力の強化を図っていますが、当社グループの重要な技術やノウハウが予期せぬ事態により外部に流出する可能性や当社グループの知的財産権が侵害される可能性があります。他方、将来的に他社との間で知的財産を巡って紛争が生じた際に当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。このような場合には、事業における競争力が低下し業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、国内外において知的財産権の取得・管理、さらに、技術ノウハウ等の適正な情報管理等により知的財産の保護を図るとともに、第三者が保有する知的財産権についてもその権利を尊重し、特許クリアランスの確保に万全を期しています。

(13)買収・資本提携

当社グループは、事業拡大、技術獲得、又は競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しています。このような買収や資本提携等においては、当初の期待を下回るシナジー効果、コスト改善の失敗、想定外の瑕疵の発覚や債務の拡大、出資先企業の経営成績や財政状態の悪化による企業価値の低下等によって業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループは、買収・資本提携実施前において事前段階の適切な市場調査やデューデリジェンス、慎重な事業評価と契約交渉、十分な社内審議等のプロセスを経ることに加え、買収・資本提携実施後は当社グループへの円滑な融合・協力関係を実現するべく十分な経営資源を投入するとともに、適切にモニタリングを行うことによって、リスクを極力低減させることに努めています。

(14)訴訟

当社グループは、国内外で行う広範な事業活動の中で訴訟、その他の法的手続に関わる場合があります。将来の帰趨を予測することは困難ですが、訴訟等において不利益な決定や判決がなされる場合には、業績に悪影響を与える可能性があります。なお、現在係争中の主な訴訟事件は次のとおりです。

2008年5月以降、建設作業等従事者及びその遺族らが国及びウベボード(株)(当社連結子会社)を含む建材メーカー40社余に対して、建設現場で使用されていた石綿含有建材の石綿粉じんを吸引して石綿関連疾患に罹患したとして、連帯して損害を賠償するように求めて訴えを順次提起していますが、これまでの判決において、ウベボード㈱に対する請求はいずれも棄却されました。現在、全国の裁判所に15件の訴訟が係属中で、その請求額は最大で71億円です。

以上のような訴訟リスクに対しては、業務に関連する法令情報の収集や法令遵守に関する研修等を継続的に実施し、紛争発生を予防するとともに、訴訟の発生後も弁護士等と適切に連携を取りながら訴訟活動を行うことによって、会社業績への影響の低減等に努めています。

  • (注)上記の請求額は、ウベボード(株)を被告とする訴えの請求額を合計したもので、国及び他の建材メーカーと連帯して請求を受けているものです。

(15)サプライチェーン

当社グループは、国内外から種々の原燃料、資材等を調達し、また、国内外に製品を出荷しています。調達においては、関連企業の倒産、戦争・紛争・テロ、パンデミック、自然災害、地球環境問題、人権問題等により原燃料価格の上昇や調達ルートの寸断等が発生し、また、物流においてはドライバー不足や時間外労働規制強化、燃料費の高騰によりコストの上昇や寸断が発生し、ともに当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

以上のようなリスクに対して当社グループでは、サプライチェーン全体を通じてサステナブル調達に関わるUBEグループのリスクをマネジメントするサプライチェーンマネジメント委員会を設置し、調達基本指針やガイドライン等を定めサステナブル調達の取組みを推進しています。原燃料及び資材価格の上昇に対しては、下請法等の関連法規を遵守した適切な交渉によりパートナーシップ構築を進めるとともに、製品価格への迅速な転嫁や製造コストの削減による当社損益影響の軽減策を実施しています。調達ルートの寸断に対しては、原燃料の調達先及び生産拠点の分散、適正な在庫量の確保等、リスクが顕在化した場合には事前に準備した対策を随時運用することで、当社事業活動への影響の最小化に努めています。また、物流のコスト上昇や寸断に対しては、関連法規を遵守した適切な交渉や、国内物流ではモーダルシフトの拡充、海外物流では複数輸送手段の確保等安定した輸送体制の確保、国内ドライバーの負担削減では輸送ロットサイズを拡大することによる小ロット輸送の削減と運行車両数の集約に加え、構内物流会社と連携した荷待ち時間・荷役時間の把握と削減等を進め、ホワイト物流構築に努めています。